2011年4月6日水曜日

福島第一原発事故による被害農業者救済の緊急提言

2011年4月
内閣総理大臣 菅 直人 様
農林水産大臣 鹿野道彦 様
厚生労働大臣 細川律夫 様
茨城県知事  橋本 昌 様

福島第一原発事故による被害農業者救済の緊急提言

 未曾有の東日本大震災にあたり県の最高責任者として最大限のご尽力いただいておりますことに敬意を表し、お礼申し上げます。

 さて、今般の震災に続き、福島第一原発事故による広域にわたる放射性物質拡散被害は、日々深刻の度を増しています。食品、ひいては環境全体への影響は今後長期にわたり適切な監視と対応が必要です。私どもは茨城県で農業を営んでおりますが、この度の放射性物質拡散により私どもの農産物も少なからず被害を受けました。そこで、今後の対策・救済策に反映していただきたく、私たち農業者の立場から思いをお伝えし、緊急に以下の提言をさせていただくものです。


1、   農産物モニタリングを拡充してください
 3月21日の原子力災害特措法に基づくホウレンソウ等の出荷制限を前後して、各県、各市町村によるモニタリングとその結果発表が継続的に行われています。
 現状、試料の採取地点や品目、頻度などの測定条件に一貫性がないため、自らの生産する農産物が汚染されているのかいないのか判然としない状態です。したがって消費者の信頼に応えようとすれば出荷制限品目でなくても出荷を止めざるを得ませんこのような状況を改善するためには、汚染の実態を体系的に把握し、速やかに公開する必要があると考えます。汚染の可能性のある範囲を幅広く特定し、採取地点をメッシュ化、全品目定点定期のモニタリングが必要です。そのことで汚染が広がっているのか収束に向かっているのかはじめて判断できますし、今後野菜等の生産が可能なのか想定できます。
加えて、検出された放射性物質の種類によっては、半減期を考慮して将来に渡り汚染状況の計測を続けることも要望します。

2、   放射性物質の規制は国際的な基準に基づいてください
 3月28日に橋本知事が福島県および関東地方の1都5県の知事とともに蓮舫特命担当大臣および枝野官房長官に対し行った緊急要望活動の中で、各県知事から暫定規制値の緩和が求められた旨の報道があり、消費者のみならず私たち生産者も戸惑いを覚えました。このような事態になるまで日本に放射性物質に関する規制値がなかったことが問題ですが、欧州をはじめとする諸外国ではWHOより厳しい規制で消費者の健康に配慮している実情に鑑み、暫定規制値を厳しくすることはあっても緩和することなどあってはなりません。緩和すれば短期的には出荷できる野菜を増やせるかもしれませんが、長期的には消費者および世界各国からの信頼を大きく損ね、また国民の健康に不安を残すことになります。無理に販売を続けさせるのではなく、生産や販売ができなかったことによる不利益は東京電力に損害賠償を求めていくべきです。

3、消費者の安心への要求にはデータをもって応えてください
 消費者の食品の安全性を重視する傾向は年々まり、より安全な食品を求めようとすることは健全な姿です。放射性物質の汚染の実態がわからずまた暫定規制値の説明が不十分なままでは、消費者や販売業者不安を抱くのは当然です。
汚染に関する十分なデータが公表されれば、一時的な混乱はあっても次第に「風評」は収束します。しかし現状では測定した結果、安全が判明したのか、そもそも検査をしていないので汚染が判明していないだけなのか判断がつきません。これでは消費者や販売業者が県内産の野菜すべてを拒否したとしても仕方がありません。残念ながら現在の「風評被害」は行政および関係諸機関力不足の結果と言わざるを得ません県は「風評被害」を訴え抑えようとするのではなく、消費者の安心への要求にデータをもって応え続け、そして信頼を得る姿勢を貫いてください。不安から購入を控える消費者に「風評」という言葉を浴びせるのは厳に謹んでいただきたいと思います。

4、   農業者の明日への希望のため、被害補償を閣議決定してください
 福島第一原発現地では、収束に向け命がけの作業が繰り広げられているようです。作業従事の皆様の労苦に感謝しながら一日も早い収束を願うばかりですが、現実は厳しく長い戦いとなるでしょう。
 私たち農業者にもまた、厳しい現実が立ちふさがっています。消費者の笑顔を思い浮かべながら丹精込めて育てた農産物が出荷できない、売れないことに加え、原発事故の責任を有する東京電力と国による損害賠償が未だ明確に表明されていないことによります。内閣は、東京電力に対し農業者への損害賠償の早急な実施を強く指導すること、並びに国としても農業者への補償にあたること早急に閣議決定し、発表して下さい。このことなくして、絶望の淵にある農業者を救うことはできません。「想定外」の一言で責任を免れようとする東京電力の姿勢を私たちは決して容認しません。日本国政府および茨城県の責任ある対応を求めます。

5、   茨城県は原発被害都県の先頭に立って被害の救済に尽くしてください
 土壌が汚染され数十年にわたり農業ができなくなる可能性のある地域を抱える福島県の農業者の惨状は、言葉に表せない苦しみのなかにあると思います。出荷制限のかかった農業者の数も茨城県の比ではありません。茨城県農業の再生、復興とともに、福島、宮城、岩手などの農業者の連帯が必要です。
 橋本知事は、その先頭に立っていただきますようお願い申し上げます。
以上

茨城県つくば市手子生997-1
農業生産法人オーガニックファームつくばの風有限会社
代表取締役 松岡 尚孝

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